自虐的な笑いがすべていい、というわけではないビオトープ:睡蓮鉢の中の小アジア

2016年06月16日

伊集院光:高回転アドリブマシン

「一番おもしろいと思うお笑いは何(誰)か?」と聞かれたら、僕は迷うことなく
伊集院光と答える。
大阪出身の僕にとって、関西芸人で彼よりもおもしろい、と思える芸人がいない
ということは何とも哀しいことではあるが、残念ながら伊集院が一番おもしろい、
という事実は変えられない。

実は僕は伊集院光と同い年で、他に同い年の有名人といえば、清原、石野卓球、
三浦知良、坂本冬美、ジュリア・ロバーツ等がいる。

伊集院光のおもしろさをひとことで言えば、その頭の回転の速さである。
彼は三遊亭円楽(元楽太郎)の弟子で、三遊亭楽大という落語家であったことは
有名であるが、落語家は廃業して、今はラジオでのしゃべくりをメインにしている。
現在やっている「深夜の馬鹿力」と、最近始まった「伊集院光とらじおと」と、他にも
あるかもしれないが、とにかく、いつも基本的にラジオの生放送で、勝負している。
伊集院が生放送で見せるアドリブ芸の回転の速さは、同い年の僕にとって、
驚きである。50歳を目前としてあれだけ脳が回転するとは!

たとえば、、、
フリートーク中の話の流れで、「もし自分が謝罪会見をするとしたら」という例として、
「オーストラリアの両生類を自分の不注意で間違って全滅させてしまった」という
普通は思いつかない例がパッと出てくる。
。。。すごい。

西には、同様に落語から入って、ラジオの世界に"転向"した芸人、笑福亭鶴瓶がいる。
笑福亭鶴瓶も伊集院と同じく、 生のラジオ放送を長く続けていた(今も?)。

伊集院と鶴瓶の共通点は、ラジオ、下ネタ、自虐性、とあるが(体型も?)、そのいずれ
もがそれぞれ微妙に異なっている。
鶴瓶はいわゆる「大阪のおばちゃん」的な笑いであるのに対し、伊集院の
それは「高回転マシン」というべきか。

漢字一文字で表すなら、「鶴瓶=鈍、伊集院=鋭」。

鶴瓶の下ネタについては、テレビの生放送で下半身を露出する事件以外、あまり
知られていないことかもしれないが、ラジオでの鶴瓶の下ネタにも、「鈍さ」が
よく出ていて味わい深いものである。

伝説のラジオ番組、「鶴瓶・新野のぬかるみの世界」という関西圏でしか流れて
いなかった深夜放送。鶴瓶と放送作家、新野新の二人が、二時間ぶっつづけで
世間話をする、という、聞いたことのない人にとっては何がおもしろいのか伝わり
づらいかも知れないが、とにかくディープな世界を繰り広げていた番組で、
おそらく今の時代には不可能なのではないか、とさえ思えるものであった。
ここでされる下ネタは、本当に大阪のおばちゃん二人が下町で話しているような
下世話な会話で、その鈍い感じがなんとも面白かった。

伊集院の下ネタはそれとは全く異なる。
伊集院のおもしろさは、基本的に自虐的な笑いをベースにしている、という点は
鶴瓶と共通するのかも知れないが、その自虐性を「共有」するのではなく、「自分だけ
が劣っている」ということを強調する点で大きく異なる。
下ネタについても、自分が仮性包茎で短小であること、変態的な嗜好(の持ち主
であることを演じる)、年に何度かうんこを漏らす(これは事実のようだ)など、
自虐性によって観客と自分が違う、ということをおもしろさとして強調する。
ある意味、これは観客を「突き放す」ことであり、そこにスピード感が生まれるの
かも知れない。
これは、自虐的でありながらそれを観客と「共有」しようとする鶴瓶とは大きく異なる。

下ネタ以外であっても、学歴が低いこと、高校生時代にひきこもりであったこと、
オシャレな場が苦手なこと、体型と目つき(蛇のような)などを自虐的に笑いにする。
それらは他の自虐ネタに見られるような痛々しさはなく、「笑える笑い」にしている
ところが彼の芸である。

鶴瓶が「ぬかるみの世界」をまったりとした時間が流れる生放送として、ディープな
世界を繰り広げていたのに対し、伊集院の深夜放送はとにかくスピーディーに
時間が流れながらもディープ。

特に伊集院のフリートークはたまらない。
一週間に起こったできごと(自転車でどこかに行った話が多い)を話す中で、
脱線したボケを入れる。これが芸風。
ラジオなので、何らかのメモ書きを見ているのかどうか定かではないが、聴いている
限りでは間違いなくアドリブであると思われるボケがところどころに挟まれる。
このスピード感がたまらない。

僕と同い年(アラフィフ)の芸人が、中高生のハートをちゃんと掴めている、という
こともすごいことだが、これもこのスピード感にあるのだろう。 

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myinnerasia at 18:06│(笑)い 
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