2016年08月30日

黄金比と1/fゆらぎと不自由さと

「パルテノン神殿は黄金比に基づいてデザインされている」ということをずっと信じていた僕は、それが都市伝説であった、ということを最近知ってショックを受けた。
かつて建築デザインを専攻していた僕は、作者個人の感性を拠り所にしない「普遍的な美の根拠」のようなものを求めていた。
芸術家個人の事情や作家の感性にもとづいた美学というものをまるで信用できなかったからだ。

そこで僕は「形」を作る時の拠り所として「黄金比」という古典的な美の基準に注目した。
 

黄金比を数式で表すと、下記のとおりである(数式を文字で書けないので図で)。
黄金比

この比率を小数で表すと、約1:1.61803...である。つまり右辺は循環小数であり、永久に数字が続くが、近似するとだいたい5:8である。
なぜこの比率が「美しい」といわれているのか分からないが、現代でもカードの縦横比などにこの比率が使われている。
この比率が古代から使われている、というときに、なぜこんな循環小数が用いられることになったか、という疑問が湧くかも知れない。これは、黄金比を求めるための作図法を知ればわかりやすい。

黄金比は下記のように作図することで求められる。
黄金比作図法
1.まず、正方形を描く。この正方形の一辺の長さを1とする。
2.正方形の底辺の中央から、右上の角に直線を引く。この長さはsqrt(5)/2(2分のルート5)になる。
これはピタゴラスの定理から明らか(直角三角形の直角を挟む辺の長さをそれぞれ二乗したものの和は、斜めの辺の二乗になる:(1/2) x (1/2) + 1 x 1 = 1/4 + 1 = 5/4)。
3.コンパスの中心を正方形の底辺の中央に起き、今引いた直線を半径とする弧を描き、底辺と重なるところを求める。
4.そこでできる長方形の比率が黄金比である。

この古典的な美の根拠であったはずの黄金比があらゆる古典的な美術作品、建築物に用いられている、ということを僕はずっと信じていた。
そして、その比率という規則に縛られた不自由の中で作られる形こそが普遍的な美である、と思っていた。
パルテノン神殿が黄金比に基づいてデザインされていると言われていたことは、実は後づけのものであった、ということである。
つまりたまたま黄金比になっていた、というだけのこと。

この黄金比の現代版が1/fゆらぎである。
1/fゆらぎについても、黄金比と同様、「なぜそのスペクトル分布を持つ波が人間にとって心地よいのか」という科学的な説明はされていない。「アルファ波が1/fゆらぎだから」だとか「自然界に見られるスペクトル分布だから」などという説明はあるが、それも結局は根拠として曖昧なものである。

だが、その「1/fゆらぎという規則に従ってものを創る」という不自由な制作というものが可能であれば、後づけではないパルテノン神殿を創ることも可能なはず。

ここで重要なことは、1/fゆらぎという規則は、黄金比と同様、「鑑賞者には認識されない規則」である、ということである。いずれも明確な規則でありながら、サブリミナル・メッセージ的な役割として、鑑賞者に気づかれることなく、「なんかいい感じ」を与える。

「1/fゆらぎという規則に従ってものを創る」ということは、たとえばニューラルネットが創りだした形を「1/fゆらぎ」という評価関数で評価し、より1/fゆらぎに近づくようにニューラルネットに学習をさせる、ということで可能なはずである。(ということを20年ほど前に僕は建築学科で研究していた。)

「1/fゆらぎ」という評価関数とニューラルネットによる創作。
これは、中ザワヒデキが進めている「人工知能美学芸術」における「Cの領域」すなわち「人間が行う美学に基づいて機械が行う美術」というところに近いものなのかも知れない。
ただ、この「1/fゆらぎ」という物自体も「人間が行う美学」と言えるのかどうかは怪しいが。
そしてニューラルネットによってCの領域の実現が可能であるということであれば、次のステップは1/fゆらぎに相当する美の評価基準を機械自らが発見する力を持つことである。

これにより、Dの領域もあっさりと実現する(かも知れない)。 


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myinnerasia at 08:03│Comments(0)創ることについて 

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